激動するもの(引用)
さういふ言葉で言へないものがあるのだ
さういふ考方に乗らないものがあるのだ
さういふ色で出せないものがあるのだ
さういふ見方で描けないものがあるのだ
さういふ道とはまるで違つた道があるのだ
さういふ図形にまるで嵌らない図形があるのだ
さういふものがこの空間に充満するのだ
さういふものが微塵の中にも激動するのだ
さういふものだけがいやでも己を動かすのだ
さういふものだけがこの水引草に紅い点々をうつのだ
高村光太郎
開催にあたり
2010年5月は松田正平の七回忌です。当館では2006年開館以来、コーナー展示の中で松田の絵画を発信して参りましたが、この節目の年に特別展を開催し、松田の画業の一端を振り返ります。
松田正平(1913-2004)は具象絵画の道をひたすら歩み続けた人でしたが、松田の仕草を語るとき、多弁を弄するより光太郎のこの詩こそが松田の精神を表しているものだと思います。
毎日デッサンを欠かさなかった松田正平。そのデッサンを元に描かれた油絵は比喩のない美しさにたどり着きました。しかし、本人はまだまだと思っていたに違いありません。松田正平はどんな境地を見ていたのでしょうか。答えは風に吹かれているのかもしれません。
どうぞ、松田正平の世界をお楽しみください。
展覧会開催にあたり、ご遺族、関係者ならびに所蔵家の方々にご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。
館主
松田正平(1913 – 2004)
1932年 | 東京美術学校西洋画科に入学。藤島武二教室に学ぶ |
1937年 | 東京美術学校卒業。フランスへ留学。パリのアカデミー・コラロッシュに通う |
1939年 | 帰国 |
1984年 | 第16回日本芸術大賞受賞(新潮文芸振興会より) |
1987年 | 松田正平展開催(山口県立美術館) |
2005年 | NHK新日曜美術館「鬼は易しいが犬は難しい~松田正平の世界」放映 |