開催にあたり
ミュジアム・フロムウィンズは開館して5年目に入りました。これを機に特別展「洲之内徹の眼」を開催します。
洲之内徹が去って23年が経ちましたが、その著書『気まぐれ美術館シリーズ』は今も輝きを失っていません。洲之内の絵を見る眼に厳しさだけではなく、柔軟さや優しさを感じるのは、理論を前提とした冷静な批評とは違い、自分自身が絵の中に入って直にその声を聴くという姿勢を貫いていたからではないでしょうか。言い換えれば、実利を求める効率的な物差しを持っていなかったということかもしれません。
洲之内が一貫して絵に求めたものは何であったのか、ゆかりの作家を通して見てみたいと思います。
本展の開催にあたり貴重な作品をお貸しくださった所蔵家の方々ならびにご協力いただきました関係者の方々に深く御礼申し上げます。
館主
洲之内徹(1913-1987)
小説家、美術評論家、画廊主(現代画廊)
小説家としての洲之内は芥川賞の候補に何度かノミネートされたが、受賞には至らなかった。しかし、その筆力は美術エッセイ『気まぐれ美術館』で開花し、文芸評論家の小林秀雄をして「いま一番の批評家は洲之内徹」と言わしめたほどであった。
『気まぐれ美術館』は『芸術新潮』に13年もの長きにわたり連載され、多くのファンを獲得し、今だにファンを魅了し続けている。(※『気まぐれ美術館シリーズ』全6冊は新潮社から刊行されている)
現代画廊では独自の審美眼に基づき多くの展覧会を開催したが、気に入った絵を売りたがらないことでも知られ、根っからの絵好きだった。洲之内の優れた絵画コレクションは、没後、宮城県美術館に寄贈された。